手を、握って欲しい。


       今、俺は…



       君の…






    「愛と絆」





       どんなに、愛がないって言われても良い。

       だって、本当は心から君を愛しているから…

       それが、君に伝わってくれれば良いんだ。







       収録の時、しかも本番。
       ちょっと、試してみた。
       そっと、手を伸ばしてみたんだ。
       君に。
       そっと、気づかれないように、触ってくれると思ってた。
       けど、そんな事にも気づかない。



       寂しくて、とても虚しく、そして痛い。









       「この間、クランクアップしたんやって?」
       「おぉ、したよ。」

       収録が、始まる前のことだった。
       不意に、光一が投げ掛けた質問。

       「そう、よく頑張ったね。おめでと。」
       そう、優しい微笑で頭を撫でながら言った。
       「やめぇや…髪が乱れる。」
       「そう?ごめん。」
       それでも、まだ微笑みかけた。




       愛がないって
       誰かに愛情を与える事が出来ないって…


       「誰かに愛情を与えなさそう。」


       本当に、そう思う?
       でも、ただ…
       愛に臆病なのかもしれない
       愛に対して、不器用なのかもしれない


       それでも、いい?







       収録が終わって、久しぶりに打ち上げに参加することが出来る。
       スタッフの人には
       「ドラマ終わったばかりなのに、いいの?」
       と、聞かれた。
       いい。
       もっと人の面白さ、温かさに今は触れたい。


       楽屋に戻って、光一の靴が置いてあった。
       久々の二人での仕事。
       久々の二人での楽屋。
       僕は、嬉しいよ。
       でも、君は何で俯いてるの?
       何で、悲しそうな背中なの?


       「光一?」
       「ん?」
       そっと肩に触れると、拒絶するように体を震わせた。
       「打ち上げ、行かないの?」
       「い、行くよ」
       「そう、じゃあ下で待ってるよ?」
       「うん。そうして…すぐ行くから。」








       「…あのさ、剛。」



       荷物を片つけている途中、声をかけられた。
       何か、儚げ。

       「何?」
       「収録の時、判った?」
       「手?」

       驚いた顔をして、こっちを振り向いた。
       「判ってたよ。でも、幾らなんでも、本番中は無理やわぁ…」
       剛が恥ずかしそうに言うと、光一はまた下を向いた。

       「何?何で、手を差し伸べたの?」
       彼方の、行動には一つ一つ意味があって…
       一つ一つ、僕に向けられたもの。



       「…感じたい。」
       「え…?」
       「最近、全然剛に触ってない。
        もっと、触れていたい。なのに、仕事が邪魔をする。
        でも、それは仕事だからしょうがないから…仕方ないから。」
       「うん。」

       ゆっくり立ち上がって、剛のほうへ歩き出した。
       「だから、仕事中でも剛を求めた自分が居た。」
       「そう。」
       「うん…」

       光一は剛の首筋に顔を埋め、ギュッと抱きしめた。
       それに答えるかのように、剛も光一の背中に手を伸ばす。

       「なぁ、光ちゃん。」
       「ん?」
       「下まで、手ぇ繋いで行こうか。」
       「いいんか?」
       「バレなきゃ、ええよ」
       「ありがと。」



       手を繋ぐと、安心するんだ。
       今考えている事が
       その人をどれだけ愛しているかが
       全て伝わるような気がして…

       その手の温もりは、
       生きれる証拠で、愛しい人の証だから。



       「なぁ、剛。」
       「ん?」
       「俺は、メチャ恋愛に不器用やねん。」
       「うん。」
       「だけど、そんな俺だけどツヨのこと好きで…愛してて良い?」
       「もちろん。感無量やね。」
       「ありがとう。」




       愛に対して臆病かもしれへん。
       愛に対して不器用かもしれへん。
       でもな、そんな俺でも一生懸命、人を愛してんよ。
       必死で守ろうとしてんよ。

       だから、どうか…
       彼方だけには、この事を判って欲しい。








       俺は、
       君の、
       温もりを、
       いつでも、
       求めてるから…

       そんな時は、
       手を、
       差し出すから、
       その手を、
       握って欲しい。




       俺のそばに君が居る事を、証明して欲しい。









                ―大丈夫…―








                 あの朝、どうしても寂しくて光一の家に行った。
                 毎日忙しい日々の中、思い出すのはあの日のこと。




                 収録後に言われた、光一の舞台の話。
                 …いいよ。 
                 光一の仕事だもの。
                 それに光一は舞台が好きだし。
                 何より、仕事全体好きな人だから…
                 光一も、心から喜んでると思う。


                 でも、心配。
                 コンサートも近いし、またドラマでも入ったりしたら…
                 唯でさえ、自分の健康管理には無頓着な人だから。
                 ないとは思うけど、倒れたりしたら…
                 とか、色々不幸な事ばかり考えてしまう。
                 判ってる…そんなこと心配しなくても光一は強いって…


                 だけど…
                 自分に自惚れ強がってしまった、あの日。
                 ――大丈夫やから、心配しないで…―
                 
                 何が、大丈夫なの?
                 そんな余裕なんか何処にもないのに…
                 自分が重荷になりたくなかった。
                 思いっきり仕事して輝いている光一が好きだから…
                 光一には、僕の心中を悟られたくない。
                 必死に隠した。
                 心を殺した。




                 我慢で限界で、光一の家に行ってしまったあの日。
                 本当は寝顔だけでも見て帰ろうと思った。
                 でも、玄関で光一の
                 ――俺は、大丈夫じゃないんやけどな…
                 その言葉で、僕は涙が出そうになった。


                 あぁ…ここまで自分の事を愛してくれる人がこの世の中にいたんだ…

                 何度も強がる。
                 自分を隠す。
                 それでも、光一にはばれてしまう。
                 何処に本音を隠しても、探し当てられてしまう…

                 そんな人に、強がりを言ってもしょうがないね…
                 何でも言うよ…

                 だから、僕の前から消えたりしないでね…



                 それが、僕からの願い。


存在の意味
存在の意味

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